堀口コラム 閑話

2021年7月15日 更新

宇宙の始まり

 コラムを始めるにあたって、「はじまり」という言葉にちなんだものが良いのではないかと考え、思いついたことがあるので、書いていきます。医療には関係ない話ですが、軽い読み物としてお時間をいただければ幸いです。
先日、ある仏教の宗派での法話を聞く機会がありました。法話とは、仏教の知識のあまりない私たちに、身の回りのことや、ときに時事ネタを出発点に経典の内容までお話してくださる興味深いものです。年齢を重ねた僧侶の風格、またその落ち着いた話しぶりにほんわりとあたたかい気分になり、自然と目を閉じて…はいけないのでしょうが、いい気分になっておりました。その話の中に登場した時事ネタが、はやぶさ2による小惑星リュウグウのサンプル採取。にわか天文ファンの私としては、興味のあるところです。すると「宇宙の始まりから存在していた岩石にたどりついた人類の偉業…」という話が。
 法話の説いている内容は壮大な話で、枝葉末節に事実誤認があったところで、その価値がいささかも変わるものではないと確認した上で、にわか天文ファンのひっかかりを述べさせていただくと、ビッグバンから始まった宇宙の最初には、岩石はなかったのです。もちろん金、銀、銅、鉄なども。宇宙の最初に存在していた元素は、水素、ヘリウムと少量のリチウムのみでした。昔化学でならった「水兵リーベ…」の「リ」まで。それが後に生まれた恒星の中の核融合でほかの元素が作られ、寿命を終えた星が超新星爆発を起こして、その元素が宇宙にまき散らされ、他の星の元になっていくのです。つまり私たちの体を構成している元素は、いくつもの星が爆発した結果、存在しているのです。なんとも壮大な話です。
 ちなみに宇宙の始まり「ビッグバン」ですが、韓流グループの名前にも使われているかっこいい名前ですが、このビッグバン理論の否定派であった天文学者フレッド・ホイル博士がその理論を揶揄してつけた名前です。なんとも小さい話です。

整形外科 中尾慎一