堀口コラム 閑話

2022年3月22日 更新

脊椎内視鏡の世界④

 世の中に資格試験、認定試験というのは、たくさんありまして、珍しいところでは「ねこ検定」「定年力検定」「あいさつ検定」などがあります。私も趣味の検定を受けていて、天文宇宙検定2級、星空宇宙天文検定2級の資格(?)を持っています。宇宙天文検定の1級は受けたことがあるのですが、とても難解で合格率も低く、おそらく何回受験しても合格は難しいと感じています。星空の方は合格しそうな気がするので、(時々ですが)勉強中です。若いころはもっと記憶力があったのだろうなと、過ぎし日を美化しながら、「一般相対性理論と特殊相対性理論の時間の進み方の違い」などの今まで勉強したことのないことをやるのは大変です。しかし趣味の勉強は、嫌いな教科をする必要がなく、興味を持てることだけできるので、大人の余裕があります。
 もちろん我々の仕事においても資格はあります。整形外科の脊椎の世界では「脊椎脊髄病学会」という学会があり、そこで認定する「脊椎脊髄外科指導医」というものがあります。指導医になるためには200例以上の執刀医の経験(+助手100例)が必要です(その他にも、偉い先生の推薦や学会活動など)。さらにそれを維持するためには、5年間で200例の脊椎手術を続ける必要があります。脊椎内視鏡でも資格があり「脊椎内視鏡下手術技術認定医」といいます。認定しているのは「日本整形外科学会」という整形外科の元締めみたいな学会です。指導医の資格を持つ医師が、自分の行った手術のビデオを送って、それを試験官が採点するものですが、それまで施行した中で、最も自信のある手術ビデオを送って、合格率5割程度の試験になっています。こちらも維持するためには、5年毎にその間で施行した手術のビデオを送ることになっています。
 ちなみに大阪と和歌山で「脊椎脊髄外科指導医」の数を比較してみると、大阪では120人、和歌山では28人となっており、大阪が和歌山の4倍くらいです。しかし「整形外科専門医」の数でみると、大阪が1660人、和歌山が190人で9倍くらいになっています。この結果から、和歌山では大阪に比べて、脊椎を専門としている医師の割合が高いことが言えます。ところが、これが「脊椎内視鏡下手術技術認定医」になりますと、大阪が10人、和歌山が16人と、なんと和歌山が大阪を逆転してしまっています。
 和歌山で脊椎内視鏡の技術認定医が多い理由は、先代の和歌山医大の教授が、日本全国に内視鏡(MED)を広めた方だからです。当時、多くの先生が、日本全国から(時々外国から)、和歌山に内視鏡の勉強に来られていました。教授以外にも、内視鏡の審査をする側の先生も和歌山にいて、その先輩に技術認定医に合格したことを報告した時に「あんなもんは入り口や」とおっしゃっておられたことを覚えています。あれから11年。この世界、出口はありませんが、どれだけ入り口から進んでこれたのでしょうか。そういえば、星空検定もコロナで延期になり、こちらも出口は見えません。

整形外科 中尾慎一