堀口コラム 閑話

2022年1月11日 更新

脊椎内視鏡の世界①

 小学校6年生の時、数年分のお年玉を貯めて、天体望遠鏡を買いに行きました。父親と一緒に心斎橋まで行って、10㎝反射望遠鏡を購入し、鏡筒、赤道儀、三脚の3箱の大きく重い段ボールを持って帰ってきました。今も我が家のインテリア兼、洗濯物の一時物干しとして活躍中です。当時は、わくわくして星を見ていたものですが、近所の友達の家には、15cm反射という望遠鏡がありました。
 10cmと15cm。わずか5cmの差ですが、価格の違いは3倍程度です(もちろん15cmが高い)。木星の縞模様は向こうの方がきれいだし、土星の輪は、こちらは金平糖の角のようだけど、向こうは何となく「輪」っぽかったり。望遠鏡の性能として、会社によって光学的に優秀であったり、そうでなかったりするのですが、同じ会社のものならば、口径が大きい(反射式なら反射鏡の径が大きい)方がわかりやすく性能が良く、価格も高いです。それは集光力が違うからです。接眼レンズを変えれば、倍率はいくらでも上げられますが、口径の小さい望遠鏡で倍率を上げても暗いだけで、はっきり星らしきものも見えなくなります。そのため、口径毎の適正倍率というものがあるのです。
 さて脊椎内視鏡ですが、私も使うMEDという内視鏡は日本全国で広く使用されている内視鏡です。この内視鏡の口径は3mmのものと4mmのものがあり、当然4mmの方がよく見えます。さらに望遠鏡でもそうですが、口径の大きい方が短くなっています。この2つの内視鏡ですが、4mmの方が傷が大きくなるかというと、傷の大きさは同じです。その理由は、MED内視鏡の仕組みでは、レトラクターという金属の筒にカメラを設置して使うからで、3mmカメラ用も4mmカメラ用も同じ径(16mm)だからです。
 そのため手術の傷の大きさも1か所であれば、16mmということになります。しかし内視鏡の利点は、傷が小さいこと(だけ)ではありません。内視鏡では、目(カメラ)が体の内部に入っていくので、上(体の外)から見えないところも見ることができます。そのため不必要に正常組織を傷つけないという特徴があり、それこそが内視鏡の最大の利点なのです。

整形外科 中尾慎一